お酒

ビールを独断と偏見で仕分けする

「とりあえずビール」の「とりあえず」には、どの銘柄が出てきても文句は言いません、という意味がこもっている気がする。でも本当は、みんな心の中でちょっとだけ文句を言っている。

そこで、横を「キレか、コクか」、縦を「居酒屋の顔か、家飲みの顔か」にして、10のビールを勝手に並べてみた。

勝手に地図

味を飲み比べて並べたわけじゃなくて、名前を聞いたときの印象と、どこでよく見かけるかの体感で置いています。おいしさの順番とは関係ありません。

スーパードライ

1987年に発売された、辛口のビール。居酒屋で「とりあえずビール」と言ったとき、出てくる確率がいちばん高い気がする一本。

ジョッキの側面にあの銀色のロゴが見えた瞬間、注文した人の半分くらいは「あ、こっちか」と思っている。思っているけど、口には出さない。そして一口目で、だいたいどうでもよくなる。

キレのいちばん端に置いた。キレすぎて、話していた内容まで一緒に流れていく。

一番搾り

最初に搾った麦汁だけで造る、という名前そのままの売り文句を持つビール。

「麦のうまみ」という言葉を、ビールのCMで最初に覚えた人もいると思う。冷蔵庫を開けると、だいたい二本くらいはこれが入っている家、けっこうありそう。突出した主張はしないぶん、誰に出しても怒られない。家飲みの「とりあえず」は、たぶんこっち。

黒ラベル

サッポロの、星のマークの缶。

居酒屋で黒ラベルが出てくると、なぜか少しだけ当たりを引いた気分になる。生ビールのジョッキでこれが出てくる店を、こっそりお気に入りリストに入れている人もいるはず。

派手さはないのに、ファンがやたら熱い。黒ラベルの話を始めた人は、たいてい泡の話まで止まらない。

ザ・プレミアム・モルツ

金色の缶。名前にプレミアムが入っているので、冷蔵庫の中でも少し胸を張っている。

週末の夜、ちょっといいおつまみを買ってきた日に限って、これを選んでしまう。いつものビールでも十分なのに、プレミアムと書いてあるだけで、その日の自分を少し甘やかした気になれる。名前の力って、たぶんこういうこと。

エビス

東京の恵比寿という地名は、このビールから来ている。地名より先にビールがあった、というのはなかなかの貫禄。

居酒屋のメニューにエビスの文字があると、ほかより少し高くても、つい指が向かう。ご褒美ビールの代名詞みたいな顔をしているけど、毎日ご褒美を名乗っている人も、たぶんいる。

ラベルの鯛が二匹になっている「ラッキーエビス」を見つけたときの嬉しさは、ちょっとしたおみくじ。

キリンラガー

麒麟のラベル。瓶ビールといえば、この絵を思い浮かべる人は多いと思う。

苦みがしっかりしている印象があって、宴会でお酌をし合う光景とセットで記憶されている。グラスが少しでも空くと、誰かが瓶を傾けてくる、あの文化ごと背負っているビール。手酌でいいのに、と思いながら、グラスを差し出してしまう。

赤星

正式にはサッポロラガービール。赤い星のラベルで、いまある日本のビールの銘柄としてはいちばん古いと言われている。

町中華や古い大衆酒場の冷蔵ケースで、瓶がずらっと並んでいる印象。メニューに「赤星あります」と書いてある店は、たぶん餃子もうまい。根拠はない。でもこの予想は、けっこう当たる気がしている。

オリオンドラフト

沖縄のビール。

軽くて飲みやすい印象があって、暑い日の海辺がいちばん似合う。旅行で飲んだときの記憶が強すぎて、東京のスーパーで見かけて買って帰ると、なぜか少しだけ味が違う気がする。たぶん違うのはビールじゃなくて、窓の外の景色。

よなよなエール

長野のヤッホーブルーイングが造る、クラフトビールの入り口みたいな一本。

コンビニで見かけるクラフトビールの中では、名前の覚えやすさが群を抜いている。これを飲んで「エールってこういうことか」と知った人が、そのまま別のクラフトビールの沼に沈んでいく。缶をちょっと高い位置から注いで、香りを嗅いでから飲む人がいたら、たぶんもう沼の中。

ハイネケン

オランダの、緑の瓶のビール。

瓶のままラッパ飲みしているだけで、なんとなく海外のバーにいる気分になれる。家で飲んでいても、パーティーのワンシーンを勝手に演出してくれる。グラスに注いだ瞬間、急に普通のビールの顔になるのが少しだけ惜しい。

まとめ

並べてみると、ビールの好みは味というより、どこで誰と飲んだかの記憶でできている気がする。宴会の瓶ビールも、旅先の一本も、たぶん味より景色を覚えている。

それでも次の居酒屋で「とりあえずビール」と言ったら、出てきたジョッキのロゴを、ちょっとだけ確認してしまうと思う。

※この記事は個人の独断と偏見です
※お酒は二十歳になってから。飲みすぎには気をつけて